1.デザインのメッセージ性
ショップパッケージはショップのコンセプトやイメージを伝えるツールとなります。ファンを裏切らないデザインにすることも大切ですが、テークアウトされる事を考えて、広くショップの告知をするデザインであることも重要です。パッケージの形状もデザインと考えれば、パッケージの原点はデザインにあると言っても過言ではありません。
デザインの依頼
デザイナーにも専門分野があります。テークアウト用パッケージのデザインはグラフィックデザイナーの手に掛かることが多いと思います。印刷全般に精通したデザイナーがグラフィックデザイナーです。デザイン事務所を探して依頼することになりますが、大手のパッケージメーカーなら社内にデザイン部門がありますので、担当の営業マンに相談してみてください。デザイン費用は別途請求されることになると思いますが、デザイン事務所に依頼するよりはかなり格安になります。また、メーカーのデザイナーはパッケージデザインが専門ですから、素材、形状などトータル的な提案を可能にしてくれます。大手のメーカーは顧客件数も多いので、その分多くの情報を保有しているのも強みです。ザ・パックというメーカーは独自の資料館を持っていて、国内外の何万点ものパッケージを展示しています。デザインを決める前に見せてもらってはいかがでしょうか。また、コンペという手法で数社からデザインの提案をしてもらう事も可能です。その場合も、パッケージのスペックを決めた上で行う方法と、パッケージのスペックやコストも含めたトータル提案で行う方法があります。
パッケージデザインは視覚に訴えることで真価が発揮されるビジュアルデザインです。色や形は何らかのメッセージを持っています。人の目に最初に入るメッセージは色彩です。この色彩を操ることのできる有能なデザイナーと出会うことが大切です。
環境に調和するデザイン
街の中はたくさんのデザインで溢れています。ショップから外に出れば、パッケージは
街並みのデザインにひとつの変化を投じることになります。例えば、モノクロ調の古風な街にピンク色のパッケージが流れてきたらどんな印象を受けるでしょうか。京都の街ではローズピンクよりやや黄みがかった桃色の方が似合います。赤でも紅赤が好ましいと思われます。テークアウトパッケージはひとつの環境デザインであると考えねばなりません。環境というベースの中で配色を考えることが必要なのです。環境と調和の取れない色彩は人に不快感を与えてしまいます。
温度を感じるデザイン
食品であれば温かい方が美味しいものや、冷たい方が美味しいものがあります。それは商品の温度という事になりますが、ファッションでしたら、気温ということになるかもしれません。お土産品でも気温を感じさせることが重要です。沖縄の土産品と北海道の土産品は色使いも違います。また、日本には四季があります。四季を感じさせることで心地よい気分にさせるデザインも必要です。ショップのアイデンティティーがしっかりしていれば、四季ごとにデザインを変えることに何ら問題はありません。細やかな気配りのできるショップとして認められなくてはならないのです。肌で感じるデザインがパッケージデザインです。
購買意欲を喚起するデザイン
色はイメージをメッセージします。例えば赤なら情熱、オレンジならフレンドリー、青なら知性というようなイメージがあります。これに他の色を組み合わせれば、さらに何とおりものイメージができてしまいます。美味しそうに見える色のパッケージに食欲をそそられたり、何故か赤いパッケージに心がときめいてしまったりもします。パッケージはショップを出てからその真価を発揮します。スイーツショップの前で黄色やオレンジ色の手提げ袋を見ると、何故かスイーツが食べたくなってしまったり、化粧品売り場でラベンダーカラーの手提げ袋を見ると、何故か綺麗になりたいという欲望に火が付いてしまったりします。一度はショップも覗いてみたいという気持ちにさせることが、ショップパッケージのデザイン的使命なのです。
紙器であれば、ギフトでもらった菓子箱のデザインに魅かれて、贈られた人までもファンにしてしまうようなデザインを志向したいものです。店舗の中でも、お客様から見えるところにディスプレイすれば、店舗デザインの脇役として、お客様を魅了させてしまうこともできてしまうのです。パッケージデザインはショップのファン作りに大きな作用をもたらしているのです。
資料6
【色のメッセージ】ショップパッケージでよく使用される配色
赤とオレンジ
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情熱的で陽気なイメージ・温度を感じる
食品・飲料関連
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赤と黄
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フレンドリーなイメージ・食欲を感じる
マクドナルドなど外食関連・ファストファッション
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ピンクとオレンジ
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ラブリーで可愛いいイメージ・香りを感じる
カジュアルファッション
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ピンクと黄
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無邪気なイメージ・好奇心を感じる
ベビー関連・スイーツ
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黄と青
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社交的なイメージ・規則性を感じる
スポーツ、アウトドア関連・薬品
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黄と緑
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自由なイメージ・自立性を感じる
インテリア関連
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黄と紫
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高尚なイメージ・プライドを感じる
アート関連・和テースト志向
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青と緑
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ストイックなイメージ・インテリジェンスを感じる
インテリア関連・マイナー志向
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青と白
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知的なイメージ・清潔さを感じる
ホスピタル関連、アカデミック志向
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紫と赤
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神秘的なイメージ・成熟度を感じる
インナーファッション・非日常的志向
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紫と緑
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閉鎖的なイメージ・嗜好性を感じる
雑貨・趣味関連
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黒と白
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潔癖なイメージ・高級感を感じる
ブランドファッション・嗜好品関連
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グレイと白
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上品なイメージ・安定感を感じる
エレガンスファッション・情報関連
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色の印象、心理的な効果については専門書も多く出版されていますので、参考にしてください。
デザインをする上で注意しておきたい事があります。以下に何点か事例を出します。
○ベタ印刷の面積の多いもの
巻取り原紙のフレキソインキや枚葉原紙で使用されるオフセットインキは、紙の上に付着した状態となっています。摩擦による色落ちを100パーセント防ぐ方法は限られてきます。印刷面の上からフィルムを貼ってしまうことがベストですが、コストが高くなりすぎて、ほとんどがニスか樹脂のコーティングで済ましてしまっております。摩擦の頻度と雨などの状況が重なれば、コーティング層の破損が進み、色落ちという状況に至ってしまうこともあります。テークアウトされるパッケージにおいては、できるだけベタの部分を少なくするか、雨天時にはポリ製のカバーを掛けて渡す配慮が必要です。
ポリ袋に使用されるグラビアインキも同様のことが言えますので、できる限りベタ部分は少なくして下さい。
○金・銀の印刷
○グラデーションの印刷
フレキソ印刷はグラデーションが苦手です。製版の技術革新によって、かなりオフセットの精度に近づいてはきましたが、まだまだ国内のメーカーには浸透していないのが現実です。版そのものが高いことや製版設備への投資が遅れていることが要因だと思います。スリーン線数はオフセットでは標準で175線程度を使用しますが、一般的にフレキソ印刷の紙袋では120線程度を使用しています。(ポリ製品では200線を越える印刷をしているメーカーもあります。)
2.販売促進のツール
サービスとして使用するパッケージは経費となりますが、消耗品と捕らえる一方で、販売促進費という見方をすることもできます。特に外で多くの人に見られることの多い手提げ袋は、買い物客を利用した流れる広告看板のような存在になることもあります。歩行者に見られている部分は以外にも紙袋のマチ面であるという事実があります。歩行者の流れの中では、人は他人の正面や後ろ姿を見ているのです。正面から歩いてくる人が提げている紙袋はマチ面しか見ることができません。このマチ面をメッセージボードとして利用することを考えてみて下さい。先々のイベントのメッセージを刷り込んだり、新しくオープンさせる姉妹店のPRをすることも可能です。また、仕入先と連携して新商品のPRをすれば、ちょっとした広告収入が得られるかもしれません。正面と同じ色を使ってデザインすれば、袋の単価もそれほどアップすることはありません。マチ分だけの差し替えですから版代も僅かです。
また、パッケージそのものを販促ツールにしてしまうこともできます。女性や子供向きにはキャラクターデザインなど可愛いパッケージを作ることで、商品の購買意欲を喚起することもできます。紙器に印刷されたデザイン部分を切り取って、パーツを組み立てれば素敵なおもちゃができてしまうというアイデアもあります。
リユースというエコの観点からも、毎日の通勤で使いたくなってしまうような紙袋、小物の整理箱として使いたくなるような紙箱などは、きっとお客様からの支持を得られることになると思います。それもひとつの販促効果です。