次に、ショップパッケージの製作を検討する上で、課題となる項目でのいくつかの問題点を挙げていきます。
サイズの問題
先ず、サービスバッグの話をします。ある百貨店に一人の年配のご婦人からクレームが入りました。先ほど買い物をして商品を入れてもらった手提げの紙袋が、異常に大きくてもったいないのではないかという内容でした。クレーム処理担当の者が売り場の販売員に聞いたところ、その商品に見合った適当なサイズの袋が無かったという話でした。
百貨店でのサイズの問題は販売商品のアイテムの多さに原因があります。衣料品は比較的融通の利く商品なのでさほど問題はないのですが、食器や雑貨、進物品など形に融通の利かない商品に問題が起こり易いのです。経費上の観点からサイズを絞り過ぎてしまっていることにも原因があります。手提げ袋の材料となる原紙を抄造する製紙メーカーや、袋を造る製袋メーカーにサイズの主導権があるのも現実です。大きければ問題ないという気持ちで渡した手提げ袋でしたが、結果的にはエコ意識に欠けた百貨店と見られてしまったのです。
もうひとつギフト箱の問題です。和洋問わず菓子類の詰め合わせには色々と苦労があります。同一商品の詰め合わせなら、あらかじめ何パターンかのセット用の箱が常備されていますが、時には形の違った数種類の商品の詰め合わせを要求されることがあります。そこで、フリーに詰め合わせができる箱が必要となり、仕切りの無いフリーに空間が使える箱が用意されます。クッキーなど焼き菓子の詰め合わせでは、お菓子が緩衝材の中で溺れてしまっているようなものを見ます。小さめの箱では値嵩感がなく、空間があり過ぎる箱では安っぽく見られてしまうのです。
デザインの問題
デザインも重要なテーマです。特にサービスバッグではテークアウトされることで、多くの人に見られます。そこから発信されるイメージが重要です。顧客のプライドを考慮せねばならないブランドショップ、美味しさを持ち帰ってもらうことに配慮が必要なスイーツのお店、それぞれがデザインのテーマを持っています。
デザインはショップの顔だからそうそう簡単に変えられるものではないという考えがあります。人の顔も整形しない限り変わることはありませんが、季節やファッション、場所に応じて髪型や化粧を変えたりしています。自分のためでもありますが、相手への気遣いという場合もあります。真冬の寒い街の中で、ブルー系のドット柄のデザインのサービスバッグを見ることがあります。本当に寒々しい空気を垂れ流していないでしょうか。一度は食べてみたい話題のスイーツでも、パッケージが可愛すぎて、男性として何となく近寄り難いということはないでしょうか。基本的にパッケージデザインの主導権は消費者の方にあるという考えをしてください。
もうひとつ、デザインの盗用の問題があります。パッケージメーカーにデザインも含めて製作依頼したら、そのデザインが盗用であったことが後々に発覚した事例があります。賠償請求ではメーカーに限らず、支払い能力の高いところへ矛先を向けてきますので、とんだ災難を受けかねません。コンプライアンスのしっかりしたメーカーを見極めることが大切です。
納期の問題
納期とは発注してから実際に商品が届くまでの期間を言います。メーカーの指定する納期には、実際に製造に必要とされる工程上の日数に、さまざまな外的要因がプラスされています。それは、メーカーが持っている受注残、原材料の調達日数、印刷のデータや木型の製作といったものです。平均すれば発注後20日から30日が平均の納期だと思われます。また、サービスバッグなどは海外生産も多く、ほとんどが船便ですから税関の審査なども含めると、シーズンにもよりますが、最短でも40日ぐらいは必要になります。納期どおりに納品してもらわねばならないものは、最初にメーカーより生産の工程表を出せておくと良いと思います。納期前には工程の進捗状況を報告させることが大切です。メーカーによってはすべて外注まかせというところもあります。発注先に問題がなくても外注先が原因で納期に間に合わなかったという事例は数多くあります。納期直前にチェックを入れたら最初の印刷工程で失敗していたという事例もあります。最初の工程を外注に頼らざるを得ないメーカーは危険です。
発注ロットの問題
基本的には発注数量が多くなれば製品の単価は安くなります。ただし、工程ごとに、ある一定の数量からはそんなに原価も変わらなくなってしまいます。通常それを経済ロットと呼んでいます。また小ロットが原価アップする理由は、其々の工程に入る前の準備時間にあります。製品はオリジナル仕様ですから、すべての工程を事前の作業から切り替える必要があります。準備時間も原価ですから小ロットには当然この負担が多くなります。しかし小ロットでも単価が多少とも安くなる方法もあります。この件は第2章で述べていきます。
また、流通される規格の原紙などには最低調達量があります。基本的に包装紙などの印刷原紙は1000枚単位、紙箱に使用される原紙は100枚単位となっています。それぞれにこれらの単位を(1連)と呼んでいます。ポリ袋の材料にも最低調達量はあります。ロット別の単価もこれらをベースに定められています。
メーカーに勧められ安くなるという理由で大量に発注することは考えものです。商品は時間の経過と共に間違いなく劣化していきます。保管状況にもよりますが、紙やポリなどの原材料は言うに及ばず、印刷インキ、糊などの形而変化も表れます。気温や湿度も影響します。1年以上経過しても残るような発注ロットは控えた方が良いと思います。適切なロットでいかに安く調達するかを考えるようにしていかねばなりません。
ギフト対応の問題
どんなショップであってもギフト対応の包装用品は必要です。百貨店やチェーン展開をしているショップなどではほとんど常備されていると思いますが、個人経営の小規模のところでは経費のこともあってなかなか難しい問題です。顧客満足度を上げるためには必要不可欠のアイテムですから、最低限度のものは常備しておいた方が良いと思います。アイテムとしては包装紙とリボンだけでも良いと思います。包装紙は常備されているものを使って、リボンや紐で演出を試みます。赤系の色とブルー系の少し落ち着いた色のものは常備しておいて下さい。包装紙を常備していないショップは、最低2種類(ベージュ系の色と赤系の色)の既成品を用意しておくことをお勧めします。ソーシャルなギフトはベージュ系の色で何とかなりますし、クリスマスやバレンタインなどは赤系の色で何とかなるものです。さらに、もともと包装紙が赤系のショップでしたら、ゴールドのリボンを常備しておけば完璧です。またもうひとつあれば重宝するのが店名の入ったゴールドのシールです。使い方などは次からの項目で述べていきます。