Ⅴ コストダウンのノウハウ Ⅴ - 1 紙袋


 この章ではこれまでご説明してきたショップパッケージについて、商品ごとのコストダウンのノウハウと、ショップパッケージ全体を捉えてのトータル的なコストダウンのノウハウもご紹介していきます。

1.紙袋

素材(原紙)でのコストダウン

 原紙で最もポピュラーなのが晒クラフトです。巻取り原紙、枚葉原紙ともにサイズ、重量(原紙の厚さ)が揃っています。表面の艶や腰の強さを求めるなら片艶白クラフトを選択することになりますが、デザインで白のベースの多いものなら晒クラフトで十分です。
原紙価格を比較しますと以下の通りです。

 一般的なサイズ320×110×400(百貨店の手提げ袋の大寸)で計算します。印刷は単色の2色、取っ手は平紐、原紙は120g/㎡とします。ロットは最低ロットで比較します。
 晒クラフト120g/㎡で設定したときの単価を100とします。片艶クラフト120g/㎡では108という比較単価になります。
 さらに重量を下げることを検討してみます。晒クラフトの100g/㎡では92という比較単価になります。

 単価は取引の条件次第で変わりますので、これはあくまで参考価格ですが、紙素材を変更すれば8%前後のコストダウンできるということになります。

印刷でのコストダウン

 メーカーの印刷原価はロット別に印刷の色数と印刷の面積によって決められています。
印刷は本刷りになる前段階で刷版のセットや、色合わせに時間が掛かります。それがロット別によって原価を変えねばならない理由となります。そして、最も原価に反映されているのがインキ代になります。
ここで、菊版(636×939)サイズの印刷代を検証してみます。
枚葉原紙では、印刷代の算出基準として印刷面積をベタ(紙の半分以上の印刷面積)・半ベタ(紙の約半分の印刷面積)・単(紙の半分以下の面積)と単純に分けていることが多いと思います。大まかですが、ロット5,000枚から10,000枚ぐらいで、単色印刷に対してベタ印刷は2倍から2.5倍の印刷代を設定しています。また、ベタの面積が多くなれば色落ち防止のために二ス引きも必要で、結果的にはベタの印刷代を2倍に計算されてしまいます。その結果、ベタ1色のデザインより単色の3色のデザインの方が安価になってしまうのです。 
巻取原紙のフレキソ印刷においてもでもベタの印刷代は高くなります。全面ベタの場合ですと、枚葉印刷と同じように単色印刷に対して2倍から2.5倍の印刷代で計算されます。巻取印刷の場合でもベタ1色よりも単色の3色のデザインの方が安くなるはずです。

サイズを見直す

 機械製袋には成形のための型が必要です。メーカーは自社が常備している型に合わせて規格サイズを決めています。枚葉原紙の製袋、巻取原紙の製袋、どちらも規格サイズが設定されています。規格サイズを設定する事で型替のロスを無くし、競争力のある低工賃を実現しようとしています。
枚葉製袋では原紙のサイズが限られているため、規格サイズも限定的なものになります。
ハトロン判(900×1200)を半才にしたサイズ(900×600)と、四六判(788×1091)を半才にしたサイズ(788×545)が基本サイズになります。
この原紙サイズがベースになって規格寸法を設定しています。

枚葉製袋での標準的な手提げ袋の規格サイズ

正面幅 マチ幅 高さ 
320×110×450・・・展開寸法(890×595)
320×110×400・・・ 〃  (890×545)
320×110×330・・・ 〃  (890×475) 
320×110×255・・・ 〃  (890×400)
280×80×400・・・・ 〃  (750×530) 
220×65×330・・・・ 〃  (600×440) 

(890×475)は900×980という準レギュラーの原紙をベースとしています。

 これ以外にも多くの規格サイズを用意しているメーカーもあります。いずれにしても、原紙のサイズにロスの無い展開寸法が、経済的な紙袋のサイズということになります。

 次に巻取原紙からの製袋ではどのようになるか検証してみます。枚葉原紙とは違い、製袋の寸法は原紙の取り幅で制約されることになります。(袋の高さはカットギアの選択で決まります。)320×110×400の手提げ袋であれば、取り幅890の原紙を使い、流れ方向を480でカットします。展開寸法は890×480となります。巻取り製袋では、流れ方向のカットギアとの組み合わせで、寸法のバリエーションを広げることができます。大手メーカーでは100種類程度の規格寸法が用意されています。流れ方向(高さの寸法)のバリエーションが多いことが特徴ですが、例えば正面幅、マチ幅が同じでも高さは下記の通りの選択肢があると思われます。(メーカーにより微妙な差はあります。)

 正面幅 マチ幅  高さのバリエーション
 320×110×(250・270・310・340.370・400・440 
 470)  
 
 例えばこのタイプの袋の場合、高さを310から250にすれば、印刷工賃も変わってきますので、単価は10%程度安くなると思います。(晒クラフト120g/㎡の場合)
 また、枚葉製袋では規格外となる正面幅の大きい袋でも、巻取製袋では規格サイズにしているメーカーもあります。一例として450×120×(360~430)という規格寸法がありますが、ブーツ用の袋や食品のギフト箱用の袋として重宝されています。

取っ手を見直す

 枚葉原紙で取っ手を付ける加工には、人手による加工と機械によって自動的に付ける加工(自動製袋)がありますが、よく使用されるPP製の紐で比べた場合、工賃は自動製袋の方が数円ほど安くできると思います。ただ、メーカーにもよりますが、規格サイズ以外の小ロットはたいへん高くなることもあるので注意してください。また、PP製の紐、紙製の丸紐、紙芯入りの布紐などは常備されていますが、機械で付けることのできる取っ手の材料は限られていますのでメーカーのサンプル帳で確認してください。
巻取製袋ではPP紐や紙製の丸紐を付けるより、紙製の平紐を付ける方がコストは安くなります。マシンのスピードの差が要因です。