段ボール以外の紙製の箱を総称して紙器と言います。印刷されたボール紙などを機械によって成形するものをトムソン箱と呼び、ボール紙の四隅をカットして奴(やっこ)型にしたものに、印刷された和紙などを包むようにして貼った箱を貼り箱と呼んでいます。
また、業界では貼合ものと言って、ボール紙と片段ボールを貼り合わせた原紙で成形される箱もあります。因みに、段ボールとは波のある紙を真ん中に挟んで3層構造になっているものですが、表の原紙を貼らずに2層にしたものを片段ボールと呼んでいます。
トムソン箱
箱には基本的な形状があります。一番多く使われているのは身(ミ)に商品を収めて、その上から蓋(フタ)を被せるという形状です。(業界ではC式の箱と呼んでいます。)商品も収めやすく、見栄えも良いので進物用には最適な箱の形状です。身や蓋の側面を折り返して2重にすることで全体の強度も高くなります。製造工程としては印刷された原紙を型抜きした後、箱の両側面に当たる箇所を機械貼りする方法と、これに加えて箱の前後の側面も同時に機械貼りしてしまう方法があります。また、コストの面から型抜きだけをし
ておいて、後からショップの方で人の手で折ってしまうという方法もあります。
この他に蓋と身を一体にした形状があります。(業界ではB式と呼んでいます。)蓋の一部が本体の身と繋がって、蓋を開閉することで商品の出し入れをします。菓子類のパッケージに多く利用されています。先の蓋と身に分かれる形状に比べて、コストが低く押されられることにメリットがあります。原紙の使用量が少なく済みますので材料費が抑えられることや、箱の本体が一体であることから、印刷、成形などの工賃面でのコストを抑えることができるからです。また、この一体型にはキャラメル箱の形状(サック箱)もあります。これらの一体型にも単に型抜きだけをしたものもありますが、組み立てる手間を省くため、箱のコーナーや側面を機械で貼ってしまうものが主流です。店頭販売がメインとなる生菓子などの商品では、組み立てやすさを考えた様々な形状が考えられています。紙器メーカーのアイデアが試されるところです。因みに段ボール箱の形状はA式と呼ばれています。
紙管
いわゆる茶筒の形状で円柱形のものも紙器の仲間に入ります。特殊な機械で原紙をスパイラル状に円柱形にした後で、上から薄い紙を巻くように貼って造る方法が一般的です。この他に1枚の原紙から缶を造る要領で、機械で円筒形に成形しながら同時に貼ってしまう方法もあります。特に高さの無い形状のものはこちらの方法で造られることが多いです。
段ボール箱
ショップで段ボール箱を使うことは少ないと思いますが、基礎的な部分だけご紹介しておきます。段ボールは紙と紙の間に波のあるもう1枚の紙を挟んだ構造です。波の高さで
名前を付けています。よく使われるのはA段(4.5~5.0mm)B段(2.5~3.0mm)E段(1.0~1.3mm)ですが、W段と言ってA段とB段を貼り合わせた5層の段ボールもあります。また、F、G、N段という厚さ1ミリ以下という段ボールもあります。段ボールの印刷は通常はフレキソ印刷ですが、G段は専用機でオフセット印刷もできるようになりました。ただ、このG段も現状では食品のトレーに使用される程度で限定的な素材に留まっています。
段ボールの紙質でK5/AF/C5という表示があれば次のような構成となります。
(表原紙)Kラインナー180g・(裏原紙)Cライナー180gのA段という事になります。KやCは紙質の違いで、Kライナーの方がバージンパルプの使用率も高く強度な紙となります。またSPC125gという表記があれば、中芯(波の部分)の原紙素材を表しています。
○紙器の印刷
基本はオフセット印刷です。紙袋や包装紙は薄紙を専門にするオフセット印刷機を使いますが、紙器ではボール紙になりますので厚紙専用の印刷機を使います。L版の全紙に対応できる印刷機を保有しているメーカーは多くはありません。ロットの多いものはグラビア印刷を使うこともありますが、国内での設備は限られています。
○紙器の素材
紙は紙器用に抄造されたものを使用します。板紙という種類に分類されています。一般的によく使用されるのは通称コートボールと言われる板紙で、正式にはコート白ボールと呼ばれています。(市場では北越紀州製紙のものが多く使用されています。)コートボールは表面を塗工しているため、白くて平滑度が高く印刷適正の高い原紙です。また、コート層の無いノーコートボールもあります。どちらにも裏白と裏鼠があります。食品分野では古紙の含有率の問題もあって、バージンパルプの構成比率の高い原紙を使用することもあります。カード紙やアイボリ紙と言われる原紙で、表面が塗工されて平滑度や白色度もアップされていますので、印刷適正も高いのが特徴です。生菓子などのパッケージにはカード紙が多く使用されています。
コートボールは需要も多いことからサイズが揃っています。規格サイズではあまりにも不経済な取り方になってしまう場合には、別抄きを交渉してみて下さい。コートボールでしたらタイミングが良ければ、3トン程度からの抄造依頼も可能だと思います。また、カード紙の中でも需要の多いニューDVという紙も比較的オリジナルサイズでの抄造を依頼しやすい原紙です。
片段貼合紙
片段ボールとコートボールなどの板紙を貼り合わせたものが片段貼合紙です。3重構造になりますが、片段ボールの部分は裏原紙と波状の中芯からできています。片段ボールに使用される段ボールの厚みは通常E段と呼ばれる厚みのものです。
☆食品用紙器での注意点
食品が直接紙に触れる場合には紙の選択に注意してください。古紙に含まれるカドニウム、鉛など金属、増白剤に使用される蛍光染料は有害物質です。製紙メーカーの安全データシート(MSDS)を取り寄せると良いと思います。通常はカード紙クラス以上の紙を使用します。
資料3
コートボールのサイズ
常備在庫サイズ
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270g
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310g
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350g
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400g
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450g
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550g
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600g
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650×950(菊判)
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○
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○
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○
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○
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○
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○
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○
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950×650
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○
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○
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○
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○
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○
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800×1100(L判)
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○
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○
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○
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○
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○
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○
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○
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550×800(L判半才)
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○
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○
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○
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○
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○
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○
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○
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準常備在庫
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560×650
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○
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○
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○
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○
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650×800
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○
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○
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○
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○
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700×850
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○
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○
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○
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700×950
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○
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○
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○
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750×1000
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○
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○
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○
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※(639×939のサイズを菊判と言いますが、板紙で流通している菊版は650×950となります。菊版には紙目の違う950×650というサイズがあります。)
※準常備在庫品は代理店によっては取り扱いがない場合もあります。寸法の最後の数字が流れ方向で、紙目の方向になります。
☆紙の重量と単位の表示
紙の重量は平米あたりのグラム数で表示されます。板紙は100枚が1連という単位で
取引されますので、1連の重量を表示することが多くなります。L版で31kgの紙という表示であれば平米350gの紙ということになります。
☆紙目について
紙はロール状に抄造されますので、流れの方向と平行に目が走ります。紙のサイズが800×1100と表示されていれば、1100が流れ方向の寸法を示しており、紙目は縦方向ということになります。紙は目に沿って折れやすくなりますので、パッケージの形状によっては紙目が重要なポイントになることもあります。規格サイズの紙は縦目の紙をメインにしております。
○紙器の表面加工
商品を包装するパッケージは商品価値を高める脇役としての使命もありますので、パッケージ本体に高級感を求められることがあります。印刷された表面にコーティング加工をすることで光沢を出したり、印刷の艶を消してマット感を出したりすることができます。また、その上からさらにエンボス加工をすることでレザー調の風合いなどを出すこともできます。
a)艶を出す表面加工
OPニス(油性)
一般的にいうニス引きです。インライン(印刷工程の中で同時にできること)で最も安価な加工です。色落ち防止で使われることがメインで、艶の透明度はそれほど期待できません。石油系溶剤を使用しない水性ニス(アクリコート)もあります。
UVコーティングニス
ニス専用のコーターを使い、UVニス(紫外線で硬化するニス)をコーティングします。厚みがあり摩擦に強いのが特徴です。
ビニール加工
アクリル系樹脂で表面をコーティングします。食品類の包装では溶剤にトルエンを使用しない水性ビニールが使われます。
プレスコート加工
紙の表面にプレス液を塗布し、熱版で表面を平滑にすることで艶を出す加工です。ビニール加工より光沢はでますが、印刷色によっては刷り傷が目立つこともあります。
ラミネート加工(フィルム貼り)
OPPフィルムやPETフィルムを表面に貼り合わせる加工で、バリア性も高くプレスコート加工より強度があります。工賃が高いのが難点です。
b)艶を消す表面加工
先の艶を出す加工方法で、その材料を変えることで艶消しの加工をします。OPマットニス、マットビニール加工、マットラミネート加工などがあります。ただ、プレス加工の艶消しはありません。OPマット二スはインラインで加工されるため安価ですが、マット感はあまり期待でません。
マットビニールを選択する方が賢明です。
c)エンボス加工
原紙の表面に様々な模様のレリーフをいれる加工です。
通常は艶出しや艶消しの加工を施した後で、エンボスローラーを通すことになります。(最初からエンボスされている原紙を使う場合もあります。)
ビニール加工の後のエンボスが一般的です。
d)箔押し
表面加工などの後で、デザインのポイント的な処理やロゴマークを入れたりするのに使われる工程です。先にロゴマークなどデザインが彫られている金属型を造り、アルミ蒸着フィルム(箔)に熱をかけて紙に型押しする加工です。箔押しする面積で価格は変わります。
また、パッケージの付け合わせによって型の数量も異なってきます。色は20種類以上から選べますし、それぞれ艶のあるものと艶消しのものがあります。村田金箔という会社が有名です。
e)浮き出し加工
印刷されたデザイン部分の一定部分だけレリーフする加工です。箔押し加工と同様の工程になりますが、箔押しと違ってデザイン部分が浮き出されます。綺麗な浮き出しにするにはアイボリ紙などの高級紙が理想的です。また、型抜き工程(トムソン)の中で同時に加工する方法もあります。木型に浮き出し用の型を付けてしまう方法ですが、デザインによっては難しい部分もあるので注意が必要です。
その他紙器メーカー独自に開発された表面加工もたくさんあります。環境負荷を考慮して溶剤を使用せず、アクリル系の樹脂を使いプレスコート並みの光沢を出す技術も開発されています。また蒸着フィルムや不織布をラミネート加工することも可能です。
○型抜き(トムソン)工程
表面加工を終えると次は型抜きの工程になります。
この工程にはそれぞれのパッケージに応じた木型が必要になります。木型とは簡単に言えば、展開図に合わせて刃を差し込んだ木製の盤面です。パッケージの展開図の大きさや、1枚の原紙から取れるパッケージの丁数よって木型の価格も変わってきます。箱の製造は
先ず展開図面を作ることから始めます。次に1枚の原紙にこの展開図面をいくつ置けるかを考えるのです。これが木型図面になり、印刷の版のデータとなります。(どのサイズの原紙を選ぶかは製造ロットで決まってしまいます。)
○貼り工程
型抜き工程の後は最終の貼り工程になります。特殊なパッケージでない限り機械で貼ることになります。貼り方や原紙のサイズにより使用する機械は違います。複雑な形状のパッケージになるほど貼らねばならない箇所も増えますが、その分組み立てる手間は省けます。6箇所同じラインで貼る機械があります。高い設計能力とのコンビネーションで良いパッケージは生まれます。
☆片段貼合紙器
片段ボールとコートボールなどの板紙を張り合わせものが片段貼合紙器です。3重構造になりますが、表面の板紙の印刷及び表面加工は1枚ものと同じ工程です。その後片段ボールを貼合して型抜きします。直接食品に触れる片段ボールの原紙にはノー蛍光のライナーを使用します。
☆紙器の設計
紙器の発注はすべて設計から始まります。図面データからキャドを使って試作品を作ります。試作品は実際に使用する原紙で作ります。ユーザーに強度、質感などを正確に伝えるためです。図面には紙の種類、重量、サイズ、打抜き工程と貼り工程のデータを入れねばなりません。工場はこれによってそれぞれの工程での機械を選択します。
☆紙器のメーカー
紙器は紙袋と違って製造工程の数が多くなります。すべてのラインを保有している企業は限られてきます。印刷会社が発注を受けて、表面加工、トムソン(抜き工程)、グルアー(貼り工程)とそれぞれの外注先に流していくパターンが多く見られます。食品など衛生管理を重視したいパッケージは、できるだけひとつの工場に全ラインが揃ったメーカーを選択して下さい。多くの外注先を経由しますと異物混入などのトラブルが懸念されます。上場されている食品メーカーを顧客に持つようなメーカーを選択すれば間違いも少ないと思います。取引を開始する前に工場見学をさせてもらうことをお勧めします。