Ⅵ ユニバールデザインと顧客第一主義



 社会的に弱い立場の人にも配慮されたデザインということですが、障害のある方、子供、高齢者に負担を掛けないパッケージでなければなりません。テークアウト用のパッケージであれば、安全性とか持ちやすさになります。また、商品を詰めたパッケージであれば、開けやすさや廃棄のしやすさを考慮しなくてはなりません。テークアウト用の紙袋で気を付けたいのは取っ手の握りやすさです。デザインやコストを優先させてしまって、細すぎたり硬かったりする素材は手に負担が掛かります。縦に長い袋も身長の低い人には持ち辛いものです。また、菓子類の箱で気を付けたいのは、商品が取り出しやすいかどうかです。生洋菓子の場合には上からは取り出しにくいので、サイド面を破ってしまわねばならない箱もあります。個装用のフィルムでも、鋏など使用せずに簡単に手で裂けるようにすることが望ましいのです。商品パッケージでは、JIS規格によって規格作成配慮指針などの規定があります。消費期限や成分表示にも文字の書体やポイントの指針があります。

 次に、ユニバーサルデザインも含めて、パッケージにおける顧客第一主義とは何かを考えます。
 冒頭の「ショップパッケージの考え方」でも触れましたが、ショップパッケージは顧客のためにあるものです。テークアウト用のパッケージは、買い物をしていただいた商品を持ち帰っていただくために便宜を図るパッケージです。それには次の要件を満たしていることが必要だと思われます。


a)持ちやすい形状であるかどうか(サイズが適切かどうか)
b)握りやすい取っ手であるかどうか(持ちやすいかどうか)
c)耐久力はあるかどうか(破損しやすくないかどうか)
d)デザインが良いかどうか(不快感を与える事がないかどうか)
e)商品価値を感じさせているかどうか(顧客のプライドを満たしているのかどうか)

 a)b)はユニバールデザインの考え方ですが、c)はテークアウト用パッケージの基本性能の高さを求めていることになります。そこでd)e)ですが、これが顧客満足度に繋がる要件となります。デザインには提供する側と、受け取る側には感覚差が存在します。例えば、受ける側が明るいイメージを期待しているのに、供給されたデザインが陰気なイメージを発していたら、あまり心地良い感じはしないと思います。また、強い個性を売り物にするショップはメッセージ性のあるデザインが良いと思いますが、テークアウト用のパッケージは多くの人に見られますので、持っている人のセンスまで問われそうなデザインは避けるべきです。テークアウト用のパッケージはショップの個性を発信できる宣伝媒体でもありますが、顧客を広告塔にしてしまうのは考えものです。不快感を与えていないかどうか、顧客の側に立って見直すことも大切です。高級ブランドといわれる高額な商品を買われる顧客にはそれなりの対応が必要です。他人とは違うというプライドを満足させるパッケージが必要とされるのです。一般的なショップのパッケージより最低ワンランクはアップさせた質感が望まれます。


 質感をワンランクアップする方法としては次のことが考えられます。

a)  素材(エンボス紙を使う、ラミネートなど表面加工をする)
b)  印刷(ロゴなど部分的に金箔押しにする)
c)  レリーフ(ロゴなど浮き出し加工をする)
d)  取っ手(布製の紐を使う)
他にも内面(裏面)も印刷するなど色々と考えられます。

 テークアウト用パッケージばかりでなく、詰め合わせ箱などギフト用パッケージにも顧客への配慮が必要です。一般的な紙器において顧客第一主義とは何かを考えて見ます。

a)  開けやすさ(開ける箇所が分かりやすいか、商品は出しやすいかどうか)
b)  廃棄のしやすさ(簡単に潰せるか、コンパクトになるか、分別できるか)
c)  商品をしっかり保護できているか(移動中に崩れないか、食品なら異物混入の心配はないかどうか)
d)  デザインに多様性があるかどうか(ギフトへの応用が可能かどうか)
e)  商品価値を感じさせているかどうか

 a)b)はユニバーサルデザインの基本的な考え方です。c)d)e)はすべてのショップパッケージに言えることです。高価なものだから価値観を感じるということではありません。商品の魅力を感じ取れるパッケージであるかどうかです。ショップや店員、そしてパッケージも含めてすべてが商品の魅力を造る要素となっています。買い物を楽しんでいただくことを一番に考えてください。そこに顧客第一主義の答えがあります。