紙器には様々な形状がありますが、ここではB式のパッケージを事例に説明していきます。B式とは蓋と身が一体となった形状で、本体を1枚の原紙から成形していくパッケージです。パッケージの大きさによって、1枚の原紙から取れる個数は違ってきますが、発注依頼をする1個のパッケージが基本となります。
a) 形状を決める
先ずどんな形状があるのか、商品の内容やそれを詰める方法、テークアウトの便宜性や取り出しやすさなども考慮して、発注先のメーカーからできるだけ多くのサンプルを見せてもらうことが必要です。商品の内容とは、食品ならば水分や油性分があるのかどうか、生ものであれば鮮度保持の機能性を必要とするかどうかという事になります。商品の内容をできるだけ詳細に伝えた上で(実際の商品を渡すことも必要)、試作依頼をします。コンストラクション(形状)の提案依頼ということになります。
b) 原紙を決める
デザインが必要ならば白の板紙になりますが、コートボールが価格も安く、サイズも豊富なので最も一般的な選択だと思います。印刷適性や高級感を求めるとカード紙やアイボリ紙の選択もあります。また、商品が原紙に直接触れるような場合、特に生菓子など食品関係では原紙の選択に注意が必要です。水分や油性分を考慮することは当然ですが、原紙の構成素材に蛍光物質や有害な重金属などが基準値以上に含まれていないことが条件になります。白色度を上げる手段として蛍光染料を使用する事もありますし、原紙には多くの古紙が使われていますので、商品と接する面に古紙層が無いことも条件となります。
生菓子が原紙に触れるような設定ならカード紙以上の原紙を使用することをお勧めします。その他、コロッケなど油性分のある商品では表面に油性分が浸透しにくい原紙を選択する必要があります。水分を吸収させたい場合や、逆に乾燥を防ぎたい場合など、それぞれの目的に合った機能紙を選択します。また、通常の原紙に表面加工を施す方法もあります。
c) デザインを決める
紙袋やポリ袋と違って形状が複雑ですから、デザインは立体としてのビジュアルで提案してもらう必要があります。デザインを自社で手配する時はベースとなるパッケージの図面データ(本図面でなく製版用図面で良い)をもらってください。デザインの確認はカラー出力だけで十分と思われるものもありますが、できれば原寸のダミーを作ってもらう方が良いと思います。原紙の強度は先に確認していますので、ダミーの原紙は何でも良いと思います。デザインとコンストラクションの関係に問題がないか確認します。店頭でディスプレイしたり、商品を詰めてショーケースに並べたりするパッケージなら、店舗イメージや商品との相乗効果を検証することも大切です。ギフト需要を考えたパッケージなら包装紙との相性も検証する必要があります。
デザインによっては紙袋同様に本紙での色校正も出してもらっておく方が良いと思います。構造が複雑なパッケージは、校正紙を本図面のデータでキャド抜きし、校正試作としてダミーを作ってもらってください。デザインが何処かで切れてしまっていないか、必要とする印刷面に白場が出てしまっていないかどうかなどチェックをします。メーカーの社内デザイナーでしたら問題は少ないと思いますが、発注者の方でデザインデータを持ち込む場合には、ソフトの違いから何らかのトラブルも考えられます。色校正でのチェックはその意味でも必要です。
d) 表面加工を決める
印刷面の保護や、高級感を演出すために表面加工が施されます。また印刷の色落ちというトラブル防止の面での考慮も必要です。UV印刷という方法も選択できますが、市場では
ビニールコーティング(ビニール引き)が多いようです。
e) ロットを決める
印刷はオフセットが主流です。紙袋で言えば枚葉ということになりますが、製袋用原紙と違いメーカーの原紙の仕入れ単位は100枚(1連)が基準です。しかし100枚から印刷していたのでは効率も悪いので、ほとんどのメーカーは最低ロットを1,000枚としています。ただ、1枚の原紙から複数の個数が取れば、その複数の1,000倍が最低ロットとなります。
f) 梱包形態を決める
紙袋やポリ袋は単体ですが、紙器はいくつかのパーツに別れてしまうことがあります。蓋と身、本体と仕切りというように、場合によって数点ものパーツが必要な形状もあります。商品をセットする場所がショップの店頭なら蓋と身、本体と仕切りなどは同じ梱包にしてもらう方が何かと都合が良いですし、工場や外注先の作業場でセットするなら別々に梱包してもらっておく方が都合の良いことが多いと思います。作業のしやすい梱包条件をメーカーに提示することが必要です。生菓子などを直接入れるパッケージにおいては、異物混入のトラブルを避けるためにも、ある程度の単位でクラフト包装するか、ポリ袋に入れてから外装ケースに詰めてもらうようにして下さい。
g) 契約
先の紙袋やポリ袋と違う点は、版代の他に木型代が発生する事です。木型代も版代も初回の発注時に請求されます。木型代は紙器の展開寸法を基本として、原紙から取れる個数や形状の違いを、一定の係数を掛けることで算出されます。